このバンドは、いろんな音楽要素満載で、なんとも一言では言いようがない。R&B、ソウル、ジャズ、ファンクといった要素が強くありつつも、ハードロック的な曲もあったり、それらが良い感じで混ざり合って独自の世界を作っている。このアルバムは、92年にデビューした6年後、98年発表の3枚目。ラテン音楽のテイストが色濃く入っていて、またごった煮ぶりが増して、そこが大きな魅力になっている。
彼らは結成の経緯が面白い。きっかけはボーカリストがいなくて悩んでたバンドのリーダー・ダニエルが、ある日シカゴの地下鉄駅で歌っていた3人組のアカペラグループを見て、あまりの迫力に圧倒され、すぐに声をかけてやって欲しいと口説いたのだという。このアカペラグループは、シカゴの繁華街にあるバーガーキングの真下の地下鉄駅でいつも歌いながら、いつかメジャーになるという夢を持っていた。偶然の出会いだったのだけどお互い補い合える、今でいうWin・Winの関係。合体することでお互い合意した。
元々のバンドは、ギター2本・ベース・ドラムという編成だったが、さらにキーボードを入れ、演奏隊5人とボーカル隊3人の8人編成のバンドとしてデビュー。バンドが持っていた幅広い音楽性と演奏力に、厚いボーカルとゴスペル風な味付けなども加わり、メジャーではないものの、しっかりした実力派のバンドとして活躍をしてきたようだ。
この地下鉄駅でボーカル隊をナンパした男、デビューアルバムのクレジットでは、Daniel Laszlo(ダニエル・ラズーロ)となっている。でも、その後このバンド関連でクレジットされるようになるDaniel Pritzker(ダニエル・プリツカー)という男と同一人物のよう。実はこのダニエル・プリツカーというのは、高級ホテルで有名なハイアットのグループの創設者一族の一員なのだ。
プリツカー家というのは、全米でも屈指の資産家一族で、フォーブス世界長者番付リストに何人も名前が入っている。このダニエル氏も2018年の番付で1020位、純資産24億ドルというとんでもないお金持ちのようだ。ファーストアルバムであえて別の名前を名乗っていたのは、ロッカーのプライドとして、そういう出自を隠したかったからなのかもしれない。確かに、若い駆け出しのロッカーが実は億万長者でっていうストーリーは、この音楽性からしたときにあんまりプラスに働く要因じゃなさそうだ。こんな話をすると、なんかいわくつきの怪しいバンドのように思われてしまうかもしれないが、曲想も演奏もとてもしっかりしたバンドだ。
ではここで、YouTubeの映像をひとつ。ファースト・アルバムに入っていて、当時FMラジオを中心にヒットをしたという曲「You don’t treat me no good」という曲のライブ演奏映像。ボーカルに恰幅良い女性が入っているのは、元々サポートボーカルとしてこのバンドに参加していたShawn Christopher というシンガー。後に正式メンバーとしてになっている。逆に男性ボーカルが2人しかいないが、これは情報不足でよくわからない。この日たまたま都合で欠席したのかも。彼らのWebサイトを見ると、ボーカル隊は創設時の3人と上記のShawnの4人となっているのだけど。まあ、それはさておき、彼らの音楽世界、是非味わって欲しい。
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