「ブルースの女帝」ベッシー・スミスや、「クイーン・オブ・ソウル」アレサ・フランクリンとも比較されてきたというソウルフルなボーカルと、タッチの強いローリングピアノ演奏を両方いっしょにやってしまう、そんな、”ピアノ・ブルース・シンガーソングライター” がこのイーデン・ブレント。
ミシシッピーで生まれ育ち、テキサスの音楽大学でジャズを学んでいる。そしてその後が凄い。大学在学中から追っかけをしていたアビー・”ブーガルー”・エイムス(Abie “Boogaloo” Ames)という故郷ミシシッピーのブルース・ピアノの巨匠に弟子入りし、指導を受け、その後’90年からは、その巨匠とデュエットで、全米各地のブルースフェスティバルなどを荒らしまわっていたのだという。彼女と47歳年の差があるその巨匠は、弟子入り当時既に60代。音大卒の若い女性と60代の巨匠との不釣り合いにも見える関係は10年以上続いたようだ。
ブルースの発祥地に生まれ育ち、音楽大学で学び、さらにブルース・レジェンドから実践の現場でビシビシ鍛えられ、もはや身体も頭も心も、どこもかしこも隙間なくブルースの素がびっしり詰まってドボドボと湧き溢れだしてきているような人なのだ。
自分名義のアルバムを初めて出したのが、その巨匠が亡くなった翌年の2003年。今回のアルバム「Jigsaw Heart」は、2014年に出された4枚目だ。
オリジナルとカバーが半々くらい。どれもミシシッピー・ブルースのエキスがたっぷり入った上に彼女のハスキー・ボーカルが弾け、ピアノが飛び跳ねている。世界としてはかなり泥臭いのだけど、前向きさを感じさせるボーカルのチカラもあって、必要以上の泥の匂いはなく、明るく気持ち良くブルースを満喫できるアルバムだ。
Apple Music のデータベースには、このアルバムはなく、2枚目の「Mississippi Number One」だけが入っている。これも彼女の世界がしっかり築かれていて良いのだけど、この「Jigsaw Heart」の方がより進化し、パワーアップしている気がするのでこちらを取り上げた。
コメント