はい。あのカーリー・サイモン。
もともと裕福な家庭に生まれ育って、たくさんの男たちと恋をして、たくさんのヒット曲を世の中に送り出して、人生勝ち組で生きてきましたという感じの彼女。今や70歳を過ぎて孫に囲まれてのゆったりした日々を過ごしているようだ。
新規制作のアルバムとしては2009年が最後のようで(ベスト盤はのぞいて) 、それ以前10年くらいは、ゆったり自分のペースで、古き良き名曲のカバーを歌ったり、フルオーケストラでジャズを歌ったりと、ベテランの余裕を漂わせながら好きな音楽をやってきた感じ。このアルバムはそんな中の一枚、2005年の作品。
これまでの彼女のアルバムは、夜な雰囲気やゴージャス/エレガント系のジャケットが多かったのだけど、今回は、木々のグリーンとやわらかい太陽の光に満ちた自然派志向。マサチューセッツ州にあるアーチストが多く住む島にある自宅の庭なのだろう(この自宅は元旦那のジェイムス・テーラーと住んでいた家らしい)。そんなあたりも、スーパースターっていうギラギラ感はなく、人生成功者の余裕が感じられる。
ウィキペディアによれば、当初カーリーはロックンロールのアルバムを作りたいと思っていたようなのだけど、レコード会社から「子守歌」のアルバムを作ってみないかという提案があり、「子守歌は、自分の子供たちに向かって歌ってきたし、今でも歌ってる」というようなことで同意し、そうして出来上がったのがこのアルバムだそうだ。
それにしても、「子守歌」というお題に対してこういう答を出してくるとは。さすが、腐ってもカーリー・サイモン(ちょっとことば悪いか。別に全然腐ってるわけではなく、言いたいのは「バリバリの第一線は退いても」っていうこと)。多くがカバー曲で、ビートルズの「Blackbird」、ジェイムス・テイラーの「You can close your eyes」、S&Gの「スカボロ・フェア」、それに「You are my sunshine」、「Over the rainbow」など誰でも知ってる曲を奔放なアレンジで子守歌に仕上げている。
僕たち大人は、子守歌だからって寝るために聴くんじゃなくていい。静まり返った深夜このまま寝るのも惜しいなんてとき、しんしんと夜が更けてゆくとともに広がるいろんな想いに、このアルバムの曲たちは静かなワクワク感を与えてくれる。
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